Filare una soglia per tessere una relazione
関係を織るために、敷居を紡ぐ
人間が自然に介入しながら変化を続けてきた里山。その人間と自然のあいだの敷居を視覚化し、新たな関係性を育むアート作品を創るプロジェクト
2024年よりヤマナハウスは、環境省の生物多様性保全推進支援事業における「里山未来拠点形成支援」に採択され、南房総生物多様性オフセットプロジェクトを開始しました。
昨年度は、裏山を舞台に「更新し続ける記憶」の装置として、倒木を作品化しました(記事はこちら)。今年度は、裏山の1点から、里山全体へ視点を分散させます。ヤマナハウスにはかつてつくられた複数の穴が存在します。夏と冬の2回で、それらの穴たちに「ある関係性」をつくりだすための作品を制作していきます。
*BLANCOは、違いを越えた交流を生む場をつくり、アートと社会を繋げるプロジェクトを企画実行するアーティストユニットです。メンバーであるCristian Boffelliさん(通称キッコさん)と宮山香里さんがヤマナハウスにお越しくださり、ローカル、コミュニティ、文化人類学をベースに、生物・自然とアートが協働することで、新たな視点を提供できるプロジェクトを進めています。(https://blanco.themedia.jp/)
ヤマナハウスに存在する「穴」とは?
ヤマナハウスの家屋近辺にはいくつかの横穴、そして裏山には大小様々な縦穴が存在します。貯蔵穴、防空壕、ビオトープ化した水溜穴…。その時代に応じていろいろな役割を担い、かつて掘られたと思われる穴たちです。

これらの穴に、「ある関係性」をつくりだすための作品を制作していくのが、今回のアートプロジェクトです。夏の回は、いくつかの横穴の入り口部分に敷居としての扉を構築し、縄で境界線を描きます。後々穴の中に、皆で相談して選んだ里山素材を設え、敷居の外から垣間見える内の世界の変化を観察してく計画です。
敷居としての扉を準備
前日の事前準備として、地域の古材を収集し、穴を開けて扉の基礎をBLANCOが制作しました。今回は、地域の廃墟に残された牛舎の窓枠や木材を再利用していきます。

古材に紐を通すための穴を開け、横穴の大きさに合わせて枠を組み立てます。
今回は、2つの横穴にフォーカスし、2種類の枠を準備しました。

組み立てた木枠がはまるかどうか、現地で確認します。1つ目の穴は、おそらく貯蔵庫に使われていたであろう穴。内部の表面は丁寧に彫られた跡が見られ、古代には彫像の配置等の宗教的な利用の可能性もあります。人が座るのにちょうどいい大きさです。

こちらが2つ目の横穴。
防空壕の用途で掘られた可能性が高いと考えられます。

参加者で「結界」を編む
翌日、ヤマナハウスのメンバーを中心に、ワークショップを開始!
運営メンバーに加え、地域の高校生1名、小学生2名も参加し、12名で2グループに分かれて制作していきます。
穴の内と外の緩やかな境界を縄で描いていきます。「結界」とは、聖域と俗域の区切りとして、仏教や神社で主に用いられてきました。神聖な場所や儀式を行う場所を、日常の空間から区別するために設けられます。今回、自然と人間の曖昧な結界として、2つの視点から向こう側が垣間見える扉を作ります。

各参加者に長縄が配布され、たるまないように気を付けながら、木枠の穴に通していきます。それぞれがお互いの動きを見ながら、少しずつ線の重なりを描いていきます。

参加者の組み合わせによっても、描かれる表情は異なってきます。
偶然にも、女性&子供だけのチーム、男性女性混合のチームに分かれての作業。

お互いが通す縄に引っ掛けたり、独自の編み方を発見しながらの制作です。できるだけたわみができないように注意しながら、しっかりと固定していきます。

想定していなかった独自の表情が見えてきました。
あちら側とこちら側を繋ぎ、編んでいく作業は、他者と共有することによって、誰も想定していなかったカタチをもたらしました。
ヤマナハウスの居間の敷居に立てかけてみました!
この扉があるだけで、向こうの風景が少し違って見えます。

それぞれの穴へ設置!
仕上がった扉を、それぞれの穴へ運びます。

穴の周りに派生している根っこに固定して、設置完了!
扉は簡単に取り外しが可能で、穴の内部に入ることができます。

外から見る内。そして内から見る外。見る側、見られる側の関係性が生まれます。



午後の時間帯は、西陽が当たるため、結界の表情が影となって内部に投影されます。天候や時間帯によって変化していきます。


この先に向けて
ワークショップの合間には、短い座学として、BLANCOがイタリアの穴の事例を紹介しました。世界中で人間が自然に介入して創った穴が残されています。各文化の土壌や風土、生活習慣により、穴の形状や役割は多様です。

今後、秋にオンラインでのワークショップを実施し、人間と自然のあいだに存在する「穴」についての考察を深めていきます。
また、今回フォーカスした2つの穴の内部に、里山素材を配置して観察する試みについても話し合う予定です。
1月末の冬の回では、生物調査と連携して「縦穴編」を実施します。里山に点在する複数の縦穴に、生き物が棲み着き産卵を促す仕組みを作品化する予定です。サンショウウオやカエル等、現地のビオトープを訪れる生き物との新たな関係を築くための敷居を創り、水中に浮遊させる試みです。
また新たな里山への視点が増えていくのが楽しみです!

今回の取り組みは、房日新聞にも取り上げられました!
この記事を見た自治体から、穴の視察や調査の連絡がきたりと、早速新たな動きがありました。身の回りにあるモノに傾注する、改めて観察してみるきっかけとなっています。
昨年度は、暴風という自然の力により倒された木を作品化しました。一方、今年度は、里山の人間が自然に介入して創られた穴 にスポットを当てました。
ARTは自然の対義語でもあり、自然に介入しながら創られたもの。前回は「再生した木(柱)」、今回は「生活のために掘られた石/土(穴)」を傾注の場と定めました。今回も、自然に手を加えながら、「観る」という行為、そして自然との関係性を問い直す試みです。
今後のYAMANAアートプロジェクトに、ぜひお気軽にご参加ください!


(発行元の許可を得て掲載しています)

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