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ヤマナハウスの自然はどんな魅力?~生き物好きメンバーの座談会

運営メンバーの1人である沖さんは、驚くほどの生き物知識と自然好き。千葉大学で生物学を専攻していた学生たちが参加するようになり、「裏山整備・裏山調査」が月例活動の定番になりました。お互いどんな印象だったのか。裏山ではどんな活動をしているのか。沖さんと学生メンバーの石井さん・奥山さんで座談会をしてもらいました!
 

座談会参加者:沖 浩志さん(ヤマナハウス副代表)×石井 和さん・奥山登啓さん(ヤマナハウスメンバー・千葉大学大学院生)


自然豊かな裏山を、丸ごと「遊び場」にできる

――最初のヤマナハウスとの関わりを教えてください!

石井さん:大学と南房総市がもともと提携していたり、地方創生にかかわる活動があったりして、その中で「南房総でこういうおもしろい活動があるよ」と聞いたのが参加のきっかけです。実はコンセプトもよくわからずに来たのですが……、初回参加して「ほとんどの活動が自然と密接に関係している」と感じたのを覚えています。自分も自然豊かなところで育ってきたけれども、風景として見ていただけかもしれないと思って。ヤマナハウスで直接、動植物に触れたり、「昆虫を食べてみる」なんて経験を通じて、自然って本当におもしろいなと改めて思っています。
 

奥山さん:僕は山形県出身で、地元で父親が、仕事の傍ら自然体験塾というのをやっていたんです。それで自然を好きになって、大学でも生物学を専攻しました。ただ、大学に入って千葉に引っ越してきて、自然に触れる機会はぐっと減っていたんですね。自分でも自然体験塾のような活動ができないかなと思い始めたころに同じくヤマナハウスの話を聞いて、参加してみました。最初の印象として、「シェア里山」というのが価値としてちゃんと成り立っているのに驚きました。
 

――というと?

奥山さん:山形での自然体験塾は、実は継続が結構難しかったんです。自然が身近過ぎたからじゃないかなと思っていて。でもここでやると、都心部からたくさんの人が来て、いきいきと草刈りなんかをするわけですよね。コミュニティとしてのおもしろさも、すごく感じました。
 
沖さん:自然や生き物に関することは、なかなかビジネスにするのが難しいとよく聞きます。ヤマナハウスで継続するための仕組みができているのは、1つの可能性を示しているかなと思っています。

生き物好きのメンバーで、一緒に裏山探索

――ちなみに、沖さんの最初の印象ってどうでしたか?

石井さん:自然や生き物に詳しいと聞いたのでいろいろと質問してみたら、何でも1秒足らずで回答してくれるのはびっくりしました。生き物目線でいろいろと見ているのも刺激的でしたし。この知識レベルは尊敬するし、目指したいところだなと思いました。
 

奥山さん:最初は無口だなぁと(笑)。2人で裏山に入ったときに、全然会話もなくてどうしようかと思ったくらいですが、今思えば、鳥の声とかに耳を澄ませていたからだったんですね。そして、生物の知識が半端ないのには本当に驚きました。生物分類技能検定というものがあって、大学院の修士までいっても3級受かるかどうかという難しさなんですね。でも沖さんは2級を取得しているんですよ! ぜひ沖さんに生き物好きになった原体験を聞いてみたいです。
 

沖さん:父親が釣り好きだったのと、育った環境に自然が多かったことと……。子どものころ、父親と海まで釣りにいって、帰りに山の中で休憩して、というのがよくあって。父親は寝ているんだけど、僕は1人でいろいろな生き物を探して……みたいなことをしていました。覚えているのが、最初にヘビを触ったときですね。祖母に「ヘビは神様の遣いだから触ったらダメ」とか言われていたんだけど、触ったらすべすべしてかわいかった(笑)。
 

奥山さん:その辺の感覚が「やっぱり沖さんだな」と思います(笑)。
 

――沖さんは逆に、二人と出会ってどうでしたか?

沖さん:生き物が好きな人がメンバーに増えたのが、まずうれしかったですね。一緒に探索したり、裏山活動したりする人ができたので。しかも大学生なので、社会人とは違う視点もあるし、取り組んでいる研究の話もおもしろかったです。
 

――沖さんはジビエ・獣害のところも詳しいわけですが、お二人はもともとジビエに触れたことはありましたか?

奥山さん:訪れる前は全然知識も体験もなかったです。ジビエはヤマナハウスのBBQで初めて食べました。イノシシがこんなにおいしいのも知らなかったですね。
 

石井さん:沖さんから話を聞いて、被害の大きさとか、ジビエの意義を改めて認識しました。ジビエに抵抗感を持つ人がいるのもわかるけれど、ぜひ南房総を訪れて沖さんの話を聞いてほしいなと思ったりします。
 

沖さん:イノシシの問題は、ベースとなる山の荒廃が一番大きくて。どれだけ知ってもらうかがまず大事だと思っています。ジビエだけが目立つのも違うと思っていて、自ら狩猟免許を取って、解体して食べるという行動が増えたらすごいですよね。自然の変化を自分で考える力も大事だと思っていて、たとえば「昨年よりサンショウウオの産卵が減っているな、調べようか」とか、自分で考える人が増えたらうれしいなと思います。

これから身近な自然をデータベース化していく予定

――裏山の活動は、最近どんな感じなのでしょう?

沖さん:どんどん歩きやすくなって……。2人をはじめ、みんなが階段づくりをやってくれたからですね。一方で、ビオトープをつくりたいと思ってずっと手をかけてきたのですが、なかなか思うようにいかない……まだまだ、水質改善などが必要だと思っています。
 

奥山さん:僕は去年、裏山に鳥の巣箱を設置したんです。なんとそこにシジュウカラが営巣してくれて、この間見たら無事に育っていました! 
 

――おぉ! 楽しみですね

奥山さん:一方で、カシナガトラップというナラ枯れの原因となる虫を調査するトラップもかけていたのですが、それは先日の台風で軒並み吹き飛ばされていました……。次回もう一回セットし直そうかなと思っています。
 

石井さん:僕は今年、ヤマナハウスの自然を冊子にまとめようと思って、生息している動植物を調べつつ、写真に撮っています。季節ごとに集めたいので、メンバーにもお願いして。できれば、サシバの写真も撮れないかなと思っているところです。裏山にいるわけではない渡り鳥ですが、この地域で見かけることができるので。
 

沖さん:今年、日本自然保護協会がやっている「モニタリングサイト1000」というところに登録できたんです。そのため、生き物を調査してデータにしてまとめていかないといけないのですが、裏山調査が進むちょうどいい機会だと思っています。石井くん、奥山くんにも手伝ってもらいながら進めていきます!

ヤマナハウスで、生き物のおもしろさを再認識

――大学院生のお2人にとって、ヤマナハウスでの活動はどんな場なのでしょう

奥山さん:僕のやっている研究は「ハエの多様性」とかを扱っていて、生活に直接役立つものではないなと思うことがたまにあるんです。今後、研究の道に進んでいきたいと思っているのですが、その時に、ひたすら研究室で実験して、学会で発表して……というだけだと、視野が狭くなってしまう気がしていて。それがヤマナハウスに来ると、研究の話を他の人に聞いてもらうこともできるし、裏山ガイドを来訪者に向けてやることで僕自身も発見があるし、というようないい刺激になっています。
 

石井さん:大学・大学院では生物学とどっぷり向き合ったのですが、ヤマナハウスでの活動は、生物学というよりも、生き物のおもしろさを再認識できる場だなと思っています。そういうのって、大学院で研究するだけだとわからないことかもしれない。自然の中で活動して、そこで気づくことが多いですし、それが大学ではない場所で得られる大事な場だと思っています!
 

――沖さんはヤマナハウスの運営も関わっていますが、今後はどんな展望でしょうか?

沖さん:もっといろんな人が来る場所になったらいいですね。ヤマナハウスを通じて南房総の生き物もだいたいわかるようにしたいと思っています。そのために、ヤマナハウスの活動を地区の人たちにもっと理解いただくのも大事だと感じます。生き物を見つけに近隣を歩き回るようなこともできたら、よりおもしろくなるなと思っています。

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